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2006年 10月 5.公開講座報告 −ストレスマネジメント−

5.公開講座報告 −ストレスマネジメント−


 第一びわこ学園では、このホームページの案内にあるように公開講座を開催している。その内容は、記憶にとどめたいものが多い。ここでは、最近の外部から講師を招いての公開講座の内容を報告する。

 (7月15日  ストレスマネジメント ) 心の体力と自己管理      
  大谷大学 文学部教授     
  臨床心理士 佐賀枝 夏文先生

 大谷大学の 文学部の教授である佐賀枝先生に、講演していただいた。先生は「こころが目に見えるとしたらどんな形をしていますか?」 と、こころの絵を書き始められた。ゴムの袋に水が入っていて、入り口にゆるやかにひもがかかって入る。
 ゴムは「ぶよぶよ」していてやわらかい。何かあると こころの入り口の紐がギュッと縮む。また、やわらかいごむの袋が、ガラスのように固くなる。
時にそれは、ちょっとした力で、バラバラにこわれそうになる。ある時は、入り口の紐が開き、弾力のある心のゴムは、やわらかく、はねるように、弾む。
「こころは変化する。だから、こころは取り扱い方があり、それを知っておくことはとても重要なことだ」と、話された。

 佐賀枝先生は こころの取り扱い方説明書を執筆されている。そこからいくつかを引用してみる。
     (こころの取り扱い説明書 三畳間文庫より)


 職場の人間関係編


 相手が不満を感じ、傷つきやすい言葉

  • ・あなたは、役割をはたしなさい
  • ・ルールやきまりだから、ダメです
  • ・相手に対して自分の感情をぶつけて論破する

 相手がうけいれやすい言葉

  • ・何何ができなかったのはどうしてですか きっと理由があるのでしょうね
  • ・決まりですが、しかしなんとか考えましょう

 日常的に、次のような心の取り扱いをこころがけるとよいでしょう

  • ・同僚や先輩であっても価値観や考え方は違うことを認識して、協働する
  • ・できれば努力目標として、相手を大切と思う訓練をする 
  • ・どのようなときでも、だめと思わず、自分を低くし小さくしない
  • ・過剰に相手にサービスしたり、媚びたりしない
  • ・どろどろした友だち関係ではなく、洗練された、おとな関係をつくる

 こころの特性について(こころの体力と自己管理編)

  • ・こころの体力はささいなことで、一瞬にして低下することがあります
  • ・こころの体力は、他者からの微笑みとやさしさで回復します

 先生のご講演の一部を引用させていただいた。こころは目に見えないものと思っていた。しかし疲れてガラスのように固くなって壊れてしまわないように、しっかりみえるものとして、取り扱い方をみんなで考えていかなければいけないことがよくわかった。


こころは、頑張ればいいとか、我慢すればいいとかというものではない。
取り扱い方をまちがえると、意欲をなくしたり、身体の不調を訴えたり、時には、いのちまでなくしてしまうことがある。利用者の支援の質を、たかめるには、それらをとりまく人達のこころが、ガラスのようにかたくなったり、入り口がぎゅっととつまったりする、こころではないことが必要だ。
お互いがこころの取り扱い方を知り、こころの入り口が解き放たれ、ゴムのように、弾むこころで、通い会うことが大切だ。たとえ、一時的にガラスのようになっても、人と人との関係の中で、しだいに、しなやかに、やわらかくなっていく雰囲気や環境が大切だ。
このようなことを、お互いが配慮していくことは、お金をかけなくても、お互いの自覚だけで、利用者の支援の質と職員のやりがい、専門性ををたかめていくことにつながって行くのである。
こころの取り扱いを知ることは、障害のある人たちをささえて行くにあたっての基本技術である。
人のこころを取り扱う我々の仕事は、それが利用者に対しても、家族に対しても、職員間でも、こころの取り扱いを十分知って、配慮し、活用できるレベルにたかめておく必要がある。

 佐賀枝先生のこころをみえる状態にして、つまり当事者として巻き込まれる前に、少し離れて眺めてみて、その取り扱い方や配慮の仕方ををみんなで考えていこう、という考え方は随分参考になった。講演していただいた佐賀枝先生に感謝します。