コラムトップへ戻る
2006年 12月 7. 「病気とは回復過程である」という希望の概念 −KOMI理論学習会から−

7. 「病気とは回復過程である」という希望の概念 −KOMI理論学習会から−


 今年度、第一びわこ学園では、看護師有志が呼びかけ、ナイチンゲール看護・KOMI理論の学習サークルができた。数人ではじめたものだが、次第に参加者も増え、看護師だけでなく、医師、薬剤師、病棟での指導介護系職員、臨時職員をしている看護学生、以前通園部門に在籍し、今は別の施設にいる外部の看護師が参加するなど少しずつ参加者が増えてきた。ナイチンゲール看護が職種を越えた理念と方法論をもっていること、また、KOMI理論では、看護と介護の共通の目標の理念を提示したうえで、専門性を尊重する考え方をもっていること、など重症心身障害の支援の考え方として、大いに参考になるものを含んでいるためと思われる。
 その中で、学習したことで印象的だったことは、「病気は回復過程である」 健康とは「もてる力を発揮すること」というナイチンゲールの考え方である。
病気という一一見マイナスの病理現象と思われる事象を、回復過程 というだれもが経験し、いっしょに立ち向かいたくなる肯定的な希望の言葉での定義にナイチンゲールは、いいかえている。
人はだれでも身体的にも肉体的にも、ストレスを受け、日々立ち直っている、いや立ち直ろうとして回復過程の道を歩んでいる。身体の細胞も日々、傷つき、死滅しながらも、栄養と酸素を取り入れながら、回復、新生、再生の道を歩んでいる。
病気とは、そのバランスがくずれ表面化した状態にすぎない。
誰の身体でも進行しているプロセスの一つの結果にすぎないのだ。
そのために、病気へのケアや支援とは、表面的に見えた病理現象や細菌、ウイルスといった病原体を除去したり、やっつけたりという狭い領域に停まらない。
回復過程を歩む、身体とその環境に対しての看護であったりケアであったりする。
今日話題になっている表面上は静かに進行する、メタボリックシンドロームにも、この考え方が実によくあてはまる。
食べる 眠る 活動する そのすべてのプロセスが回復過程への支援になりうる。
ナイチンゲールは「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、睡眠、休息、清潔、排泄、食事などを適切に選択し選択し管理すること、こういったことのすべてを、患者の生命力を消耗を最小にするよう生活過程を整えることである。」と表現している。
この生命力を「自然が身体に働きかける力」と表現し、この力が最大限に発揮できるようにするのが看護でありケアであるとしているのである。
このように、「病気を回復へのプロセス」とみる見方を僕はとても気に入った。
病気が恐ろしい者ではなく、再生と回復への歩みと、とれるからである。重症心身障害の支援にこの考え方がよくあてはまる。
生活の過程を通じて、いのちの回復過程を歩む、我々はこのプロセスを支援しているのだと思う。
この過程にこそ生きる希望がある。