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2007年 5月 29日 8.重症心身障害の特性に応じた医療・看護・リハビリ・生活支援 その1

1.はじめに


 重症心身障害の方は以下のような特性があると考えられる。

  • 1:身体にも知的にも重度の障害をもっている
  • 2:医療ケアが必要で、身体の脆弱性がある
  • 3:自分ひとりでの表現手段やコミュニケーション手段が限られている
  • 4:一人では、食べること、移動することができない

 こうした人たちへの支援をどのようにかんがえていけばよいのだろうか。


2.存在の社会的特性

 上記のような特性の中で、重症心身障害の方は、人との 関係の中で、支援をうけながら生きていきことが特に必要とされる存在である。このことにおいて、重症心身障害の方は、受け身的であるかのようにみえるが、その中での情動の表出とその交流は、周囲の人達や、支援者の心の中にも、なんらかの影響を与え、変化をおこす確かな相互性がある。そこに、その存在は弱く、もろいようで、確かな根本的な生き方があるように思える。自分だけではなく、相手が楽しいように、相手が快適なように、思いあう、まなざしの中で、はじめて、重症心身障害の方は、豊かに生きていける。逆に、重症心身障害の方が、生き生きと生活できる社会は、お互いが豊かにいきていこうとする、まなざしをもち続ける社会であるといえる。我々は、重症心身障害の方の支援を通じて、お互いが豊かに生きる社会への一歩を刻んでいともいえると思う


3.感覚と情動での世界

 重症心身障害の方は、多くの方が主に、情動と感覚の世界を中心に生きているようにみえる。気持ちいい 不快 いいにおい いやな感覚を、直接的に感じ、直接的に表現する。気持ちのよさ、よろこび、も苦痛もストレートに表現される。人によって反応や表現の仕方の差はある。笑顔や苦痛の表情、発声、などでの表現だけでなく、心拍数や分泌物の量の変化、筋緊張の程度、などのバイタルサインでの表現もある。全身で、感じて、表現する、そこに基本的生き方をみることができる。記憶、認知、概念という意味の世界の広がりをもつことは、難しいが、瞬間瞬間の情動の世界、直接的な、純粋経験とでもいうべき世界がある。それは、そのままの、むきだしの いのち とでもいうべき、はだかの姿である。満面の笑みをみるとき、ほっと癒される感じがする。表情の表出が十分でなくても、皮膚が、呼吸が、心拍数がいい状態であると、なんとなく、いのちの、おだやかな姿の表出を感じてほっとすることがある。自分たちのケアが適切であったか?確認することにもなる。不快や苦痛より、快の、笑顔の表情の中に、その人本来の姿が、より多く表現されているようにも思う。この、その人らしい表出を関わりの中でどのように、実現していけばいいのか、次回以降、考えて生きたい。