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2006年 5月 4.有限と無限を行き来する施設での対人援助

4.有限と無限を行き来する施設での対人援助


−医療、看護、介護、生活のケアプランを考える−


 重症児施設での仕事は、対人援助です。一人の人への支援は、無限といっていいほどなすべきことがあります。その人の可能性を引き出すことには、その人の無限の可能性につきあえるかが、ポイントとなります。こども急性期のいのちをまもるための治療やケアは、時間がきたからといって有限でやめる訳には行きません。

 糸賀先生は、こどもたちが、手から流れ落ちる砂を目を輝かせて、眺めていた時、それをじっと見守ったといいいます。また、水が砂にしみこむさまを、見取れるようにながめていたこどもたちの姿を見て、有限で貴重であった、山の上の水をおしみなくつかわせたということを聞いています。人の無限のひろがりに、いかにつきあえるかは重要なことです。

 ただ、われわれは、有限の世界で生きています。時間、もの、人 すべて有限の資源です。

 1日 何回、更衣をするか

 おむつ交換は何回か

 食事 時間を何分にするか

 体位変換を何回おこなうのか、

 診察や見守り、訪室の回数は何回か?

 活動や外出は、どれくらいの頻度でどれくらいの時間にするのか?

 無限に人や時間をさくわけにはいきません。利用者の無限の思いや可能性を有限の世界で実現するには、どうしたらいいのでしょうか。現場では、いろいろ迷いがあると思います。しなくてはいけないことがいっぱいあります。でも、そのすべてをやっていては、人も物も時間も足りない現実があります。その折り合いのつけかたに迷うことが多いことと思います。

 予測される定形業務には、有限の時間に有限の人を配置せざるを得ません。また頻度や回数について、有限の回数を設定せざるをえないと思います。利用者の満足度と職員の安定的に、働ける条件を考えながら、調整していく必要があります。

 その時に、やみくもに必要なことすべてに、取り組むのではなく、何をやめていいか、何を省略していいか、何を優先させるべきかをその人の全体像を意識しながら、考えて行くことが必要なのではないかと思ういます。こうしたケアマネジメントのちからが我々に求められていると思います。無限の可能性を実現するために、有限の資源をどう組み合わせるべきか? こうしたケアプランの作成にこそ、障害者支援の専門性があると思います。

 そして我々は、有限の時間と人のサービスの中に、無限の思いと、質への向上にむけて歩んで行く必要があると思います。かかわれる時間は有限だが、タッチの仕方、声のかけ方の工夫は無限に追及できます。量的には、絞らざるをえないが、質的には無限の深まりがあると思うのです。

 施設内でのケアプランをその人の人生の質と、限りある資源を結び付けて、うまく作成できる人材が今、第一びわこであるいは地域で求められているように思います。いろんな状況に冷静に対応でき、また多職種をうまく利用者にむすびつけてくる力です。職種の違いによる思いや優先順位の違いを対立ではなく、理解しあいながら、利用者支援の発展にむかう力にかえていくような知恵、が必要とされていると思います。人やものには限りがあります。しかしそれをいかす知恵のだしどころや、有限の時間で利用者に接する質の向上は無限です。有限と無限をいききしながら、この厳しい時代を、チャンスと思って乗り切っていきたいと思います。