施設長コラム

びわこ学園医療福祉センター草津 施設長   口分田政夫

 

 2010年もいよいよ押し詰まってきました。施設長コラムの発信がほとんどできないできました。最後に、今年の年頭に、施設長として職員にどんな挨拶をしたかを読み返してみた、今年1年のできたこと、できなかったことを振り返ってみたいと思います。

 

(以下は、2010年の施設長 年頭所感より引用)

職員、利用者のみなさま、あけましておめでとうございます。今年は、虎年です。虎の勢いのごとく、一人一人の夢が実現していく年になればなあと思っています。

自立支援法から障害総合福祉サービス

さて、2010年は、昨年の政権交代を受けて、自立支援法の廃止、障害者総合福祉法の制定というように動いていきます。

我々は、この間、制度の変更に振り回されてきました。我々は、今一度、制度に振り回されない、むしろ制度を提案するくらいのゆるぎのなさを持ってのぞみたいと思います。それには、現場での地道な実践を積み重ねていく必要があると考えます。

めざすもの

われわれが、めざすものは、以下のことです。

いのち 安楽 ケア

@いのちを守り、安楽なケアを提供すること。

ワクワクする生活 喜び 関係の中で実現

Aワクワクする生活や喜びを、人と人との関係の中で実現していくこと

どんな心身の状態 生きる喜びを感じる社会

Bどんな心身の状態にあっても、生きる喜びを感じることができる社会をめざしていくこと

これらのことを実施していくことは、新たな価値の創造、価値の生産、といえます。社会の変革につながるといってもよいと思います。

体位変換 吸引 食事介助

われわれは、体位変換、吸引、食事介助といった日々の、具体的ケアを通じて、この価値観を創造していきたいと思います。この、小さな具体的実践へのチャレンジが、われわれのめざす社会への変革の一歩になるのです。

医療と生活・福祉の一体提供

そのことを、実現する方法として、我々は、創設以来、医療と生活・福祉の一体提供をめざしてきました。これは、まさしく我々のルーツであり、今後もめざす方向です。

目標 課題

今、びわこ学園で直面している課題には、以下のようなものがあります。

重症化

課題の一つは、利用者の重症化です。どういうふうにみていけばいいのか、どこまで治療をするのか、いのちをまもることと生活をたのしむことの折り合いをどうしていくのか、いっしょに考えていく必要があります。

地域支援 待機者

もうひとつは、待機者の問題です。約60名の待機の方のニーズをどう解決していくかが問われています。入所枠の拡大、短期入所の受け止め体制の整備、ケアホーム、訪問サービス、外来、緊急時の体制などの整備が求められています。いずれも難しい課題ですが、力と知恵をあわせて取り組んで生きたいと思います。

デフレ、右肩上がりの時代の中で 無限の可能性の追求

このような、右肩下がりの時代にも、右肩上がりの可能性を追求していくことができるのです。それは、我々の思想の深化であり、ケア技術をはじめとする実践力の質のレベルアップであり、個人個人の能力の向上です。

それは、全体に質的に深めていくことです。@学びのレベルアップを目指すことができます。A体位変換などのケア、医療ケア、リハビリなど工夫していくことは無限にできます。Bまた、 伝えあうことも無限に広げていけます。利用者、職員、家族、地域との伝えあいのパイプを増やしていくことです。C日々の生活の中で、感じたり、味わったりすることを無限に増やしていくことも可能です。そして、お互いの感性を大事にし、他者の価値を認め合っていくことも可能です。それらは、何の資源がないところからでも実践できます。

100歳の詩人、まどみちおさんに学ぶ

新年のNHKスペシャルで、100歳の詩人 まどみちおさんが紹介されていました。100歳になっても、まだまだわからないことや不思議さがいっぱいあるとい語っておられました。小さな、蟻の姿にも宇宙のいのちの神秘さや不思議さをいっぱい感じとっておられる姿が印象的でした。われわれも、重症心身障害のことでわからないところ、不思議さはいっぱいあります。今年も、可能性の発見に向けて取り組んでいきたいと思います。

持てる力の発揮へ

2010年、利用者、職員双方の持てる力の発揮をめざして、困難はいっぱいあると思いますが、不思議がり、おもしろがる感性を大事にしながらいっしょに頑張っていけたらと思います。

2010年を振り返って

以上が今年の年頭所感でした。できたことも、できなかったこともありました。病棟契約利用ベッドをふやし、超重症の方を2名受け入れたこと、ケアホームの移行準備を進めたこと、看護師の教育にみんなで協力してとりくんだことが印象的でした。また、労働安全でノーリフトの精神の浸透、衣類検討委員会を発足させ、利用者に快適で、介護者にもやさしい衣類の作成までこぎつけました。多くの人たちの支援に感謝して1年を締めくくりたいと思います。