理事長ご挨拶
「親しみ愛される、びわこ学園に」

理事長 口分田 政夫
このたび、びわこ学園の理事長に就任いたしました。まず初めに、長年にわたりびわこ学園を支え、温かく見守り続けてくださっている地域の皆様、利用者やご家族の皆様、日頃より応援してくださる方々、また、行政関係の皆様や、ご指導いただいている教育機関の皆様に、心より感謝申し上げます。
この20年に進んできたこと
山﨑前理事長が長い間、理事長の重積を担ってこられました。その間に、進展したことは 次の3つだと思います。
1つ目は 超重症児者の増加に伴い、医療的重度化に対応すること、そして同時にその人たちも含む入所者全員の生活も大切にしていくこと。
2つ目は 地域に利用され開かれた入所機能です。長期利用、短期利用、中期有目的利用、有目的入院など多様な入所機能で地域を支援していくことです。
3つ目は 地域支援事業の拡大です。大津市立やまびこ支援センターの業務の受託、グループホームの設立、通所事業の新規開設、相談事業の開設、障害児者外来の充実、訪問看護、訪問介護など訪問系事業の開設です。
私もセンター草津の施設長として、このような事業の推進に関わってきました。このような事業を新しい時代に合致したものにしながら、地域から必要とされる事業を継続発展させていきたいと思っています。
継承すべき理念と思想
びわこ学園は、まだ重症心身障害への支援制度がない時代に、「この人たちの生きる権利を保障しなければいけない」という少数の先達の熱い思いから出発してきました。人もお金も制度もすべて不足している、そんな時代でも、創設者糸賀一雄先生、初代園長岡崎英彦先生を中心として、人々の熱い思いが社会を動かしてきたのです。近江学園の医局で杉の子組として、1954年に医師や看護師数人のスタッフから始まった重複障害のグループへの支援は、今や 職員数約770人の、施設や地域で重度障害児者を支援する組織に発展してきました。
引き継いできた理念は、「この子らを世の光に」と「本人さんはどう思てはるんやろ」の言葉です。糸賀先生や岡崎先生たちは、さらにヨコへの発達と人格発達の権利を中心とする発達保障を提唱し実践してきました。
この理念や精神は次の時代に向けて、新しいものを生み出す中で、継承していきたいと思っています。
大切にしたいこと
理事長としてまず大切にしたいことは、「親しみ愛される、びわこ学園でありたい」ということです。利用していただく当事者の皆様はもちろんのこと、ご家族や地域の皆様、ボランティアの皆様、実習に来ていただく学生の皆様、そして現場で直接支援を実施している職員など、すべての人たちに愛されるびわこ学園でありたいと思っています。
糸賀先生は、滋賀県の職員の研修会の講義中に倒れられました。その最後に、振り絞るように 「この子らを世の光に」 と ラストメッセージを発せられたことはよく知られています。そしてその直前に、「無財の七施」という白隠禅師の教えの話をされていたのです。お金や財宝を持っていなかったとしても、他人に対して施しできることが 7つあるという教えなのです。
糸賀先生は、滋賀県の職員の研修会の講義中に倒れられました。その最後に、振り絞るように 「この子らを世の光に」 と ラストメッセージを発せられたことはよく知られています。そしてその直前に、「無財の七施」という白隠禅師の教えの話をされていたのです。お金や財宝を持っていなかったとしても、他人に対して施しできることが 7つあるという教えなのです。
例えば「眼施」、人に優しい 眼差しを持って接するという意味です。「心施」 感謝の心です。何も持っていなくても、優しい眼差しで、感謝の気持ちを込めて、声をかけ合うこと、それらはどんな状況でも可能であると説かれました。この糸賀先生のラストメッセージ、「無財の七施」の精神を大切にしていきたいと思っています。
今、びわこ学園で実施すべきと考えていること
実施すべき緊急の重要事項として以下の3つを考えます。
第1は、虐待防止と医療安全対策を徹底して継続することです。これは組織への信頼の基本として重要です。
第2は、職員の確保、定着、育成です。2040年、人口減少で労働世代人口の減少と介護を要する人のピークが重なる時代がやってきます。多様な働き方と外国人労働者導入の実施で人財(材)確保を進めていく必要があります。
第3は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による、医療介護の現場での生産性の向上です。ICT(情報通信技術)を導入して、利用者、職員双方に有用な活用方法を考えていく必要があります。
組織運営の基本に据えたいこと
「協働」という言葉を軸に、事業を推進していきたいと思います。協働、まさしく「協力して働く組織」を目指していきたいと思います。びわこ学園家族の会の皆様、応援していただいているボランティアやびわこ学園後援会の皆様、地域の関係者の皆様、行政の皆様と、教育機関の皆様などと協働を進めていきたいと思います。
びわこ学園が今後も、地域社会にとってかけがえのない存在であり続けるために、今後も皆様のお力添えとご理解、またびわこ学園への変わらぬご支援、ご協力を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
